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【開催レポート】プログラマーとして上達し続けるために何が必要か - ON AIR #5 達人プログラマー

update : 2021.09.06
text : subaru nakazono

より高度なプログラミングスキルを身につけることは、多くのプログラマーの願いです。その目標を達成するため、プログラマーたちは日々の研鑽や仲間との情報交換を続けます。しかし、“達人”と呼ばれる腕前になるまでの、道のりは長く険しいもの。どうすれば、着実にプログラマーとして上達し続けられるのでしょうか。

「Builders Box - ON AIR #5 *」では、プログラマー必読書として長い間親しまれている『達人プログラマー』の著者Dave Thomas氏をゲストにお迎え。より良いプログラマーになるためのアプローチを解説いただきました。

*… 「Builders Box - ON AIR」とは、Builders Boxが企画・運営する、世界で活躍できるエンジニアになるための知見を共有するイベントです。2021年8月25日に、その第五回をオンライン配信で開催しました。

優れたプログラマーになるために大切な3つのこと

セッション序盤でDave氏は「私はこれまで、プログラマーとしてのスキルを向上させるために3つの要素を大切にしてきました」と述べます。その要素とは以下のとおり。

1. Happy doing what I'm doing(自分がやっていて楽しい)
2. Developing and learning(成長と学習)
3. Changing the world for the better(世界をより良い方向に変える)

それぞれのテーマを順に解説していきました。

テーマ1 : 自分がやっていて楽しい

ひとつめのテーマは「自分がやっていて楽しいこと」。ここでいう“楽しさ”には、2つの意味合いがあります。まず、自分が携わっているシステムが世の中の誰かの役に立ってくれるという意味の楽しさです。

Dave氏は1980年代にイギリスに住んでおり、交通運輸関係のアプリケーション開発に携わっていました。そして、偶然ある街で旅行代理店に入ったところ、なんと店舗のスタッフが、Dave氏の開発したアプリケーションを用いて仕事をしていたといいます。「本当に感動して震えがきました。自分が開発したものを、目の前にいる人が使っている。素晴らしい体験でした」と感慨深げに回顧します。

また、プログラミングという行為そのものを楽しむことも大切です。私たちの人生において、仕事に費やす時間は非常に大きいため、働くことを楽しめるかどうかは人生の充実度を左右します。また、エンジニアが幸福であることは、より良い仕事をすることにも直結します。

Dave氏は缶入りミルクの「Carnation」というブランドの事例を示します。かつてこのブランドでは「From Contented Cows(満ち足りた牛からとれたミルク)」というキャッチコピーを用いていました。

つまり、乳牛が幸せに暮らしているからこそ、ミルクの品質も高いというプロモーションをしていたのです。後世において学者が調査をしたところ、これは真実だと判明しました。愛されて育てられた牛の方が、そうでない牛よりもミルクや牛肉の品質が高くなるとわかったのです。

「プログラマーの仕事においても同様です。楽しく仕事をする人は、より良いシステムを生み出せます。私たちは自分自身の意思で行動できるのですから、自らを幸せにできるような選択をしてほしい。それが必ず仕事にも好影響をもたらします」とDave氏は伝えました。

テーマ2 : 成長と学習

次のテーマは「成長と学習」です。書籍『達人プログラマー』の中には、知識のポートフォリオという章があります。その章では、知識のポートフォリオを管理することは金融のポートフォリオを管理することと似ている、と述べられています。

知識のポートフォリオを豊かにするには定期的な投資が重要です。コツコツと時間を費やして技術を学習し、スキルを研鑽することが求められます。

また、単一の領域だけではなく複数の領域を学ぶことも重要です。ある分野だけしか習得していないと、その分野が廃れた場合に、知識の価値が著しく低下してしまいます。また同様の理由から、人気のある技術領域と実験的な技術領域の両方を学ぶこともDave氏は推奨しました。金融のポートフォリオと同様に、リスク分散が必要なのです。

金融のポートフォリオと同様にレビューとリバランスも大切です。自分はどのような点が強みなのか、習得しているスキルは適切か、戦略を変えたほうが良いか否か、世界的な技術トレンドはどのような方向に向かっているのか。こうした点を思案して投資対象を適正化することで、知識のポートフォリオはさらに充実します。

Dave氏は「スキルを習得すること」に関連する、アメリカ空軍の事例を提示しました。かつて1970年代のアメリカ空軍はある課題を抱えていたと言います。素晴らしい教育環境が整っていたにもかかわらず、成長できるパイロットとそうでないパイロットがいたのです。

効率的にパイロットを育成するため、アメリカ空軍は人間のスキル習得のメカニズムを解き明かすことにました。重役を担ったのは、Stuart DreyfusとHubert Dreyfusの兄弟。彼らは入念な研究の結果、「A Five-Stage Model of the Mental Activities Involved in Directed Skill Acquisition」という論文を発表しました。これは「ドレイファスモデル」と呼ばれています。

論文では、人々が学習する過程で脳の構造が変化することが提示されました。その変化は5つの段階に分かれています。

最初の段階は初心者です。特定の分野に関する知識や経験がなく、自力で判断を下すことができません。判断のためのフレームワークが自分の頭の中にないからです。初心者の時期には、周りの人々に指示を受けつつ、行動していきます。

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