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なぜデザインとエンジニアリングの両立を目指したか?Takram 田川氏が歩んだ“ハイブリッド型”のキャリア

update : 2020.10.29
text : subaru nakazono

自らを“デザインエンジニア”と称し、先進的なプロダクト開発を続けるTakram代表の田川欣哉氏。デザインとエンジニアリングをハイブリッドに掛け合わせたものづくりの手法は、日本のみならず世界中で高い評価を受けています。

過去には、メルカリのロゴマークリニューアルやトヨタ自動車「TOYOTA e-Palette Concept」のプレゼンテーションムービー制作、ビッグデータビジュアライゼーションシステム「RESAS Prototype」の開発といった有名プロジェクトを担当。さらには英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート校の名誉フェローを務めるほか、テックスクールやアートビジネススクールにおけるデザインリテラシー教育に従事。次世代のプロフェッショナル育成にも貢献しています。

そんな輝かしい経歴を持つ田川氏ですが、その道のりは決して順風満帆だったわけではありません。むしろ、大学時代には自身のキャリアについてひたすら悩み続けたといいます。田川氏はいかにして唯一無二のキャリアを築いてきたのでしょうか。本稿ではその足取りをたどります。

Takram代表/デザインエンジニア 英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 名誉フェロー
田川 欣哉


プロダクト・サービスからブランドまで、テクノロジーとデザインの幅広い分野に精通するデザインエンジニア。主なプロジェクトに、トヨタ自動車「e-Palette Concept」のプレゼンテーション設計、日本政府の地域経済分析システム「RESAS」のプロトタイピング、メルカリのCXO補佐、清水エスパルスのクリエティブディレクターなどがある。経済産業省・特許庁の「デザイン経営」宣言の作成にコアメンバーとして関わった。経済産業省産業構造審議会 知的財産分科会委員。グッドデザイン金賞、 iF Design Award、ニューヨーク近代美術館パーマネントコレクション、未踏ソフトウェア創造事業スーパークリエータ認定など受賞多数。東京大学工学部卒業。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート修士課程修了。2015年から2018年までロイヤル・カレッジ・オブ・アート客員教授を務め、2018年に同校から名誉フェローを授与された。

デザイナーという職業の存在を知らなかった学生時代

−田川さんは大学在学中に、電機メーカーでのインターンを経験された際、エンジニアリングとデザインの分業が行われていることにショックを受けられたのだとか。

実は、当時の私はデザイナーという職業の存在を知らなかったのですよ。ものづくりにおいて、商品企画もデザインもエンジニアリングも、全てエンジニアが担うものだと思っていました。私は偉人伝を読むのが好きで、ホンダやソニーといった企業の黎明期のエピソードに憧れていました。社員みんなでアイデアを出して試行錯誤しながら、良いプロダクトをつくり上げていく。その空気感がすごくいいなと思っていたのです。

そういったエピソードではデザイナーやエンジニアといった役割ごとに分業されているのではなく、プロダクトをより良いものにするために全員があらゆる種類の仕事に取り組んでいます。私はそういったスタイルの仕事をしたいと思うようになり、またエンジニアにさえなれば自分の目指すものづくりができると信じていました。

−ですが、実態はそうではなかったと。

インターンをした企業では職種によって役割が明確に分かれていました。プロダクトの青写真を非エンジニアが決めて、出来上がった要件をエンジニアが実装していくという流れ。つまり、エンジニアを目指していても、自分の思い描くものづくりはできないことを知ったのです。それに気づいたのが大学の専攻を工学系に選んだあとでしたから、もう後戻りできないのではないかと絶望に近い気持ちを抱きました。

一方で、デザイナーの方々が担っていた仕事のクオリティの高さをインターンの現場で見たときは感銘を受けました。彼らに経歴を尋ねてみると、ほとんどが工学部などではなく美術大学や芸術大学の出身。自分のスキルでは、デザインの道を専門で歩んできた人々にはかなわないことも、徐々に理解できたのです。まわりに相談してみても、デザインとエンジニアリングを両方やるなんて無理だからやめておけと諭される。今後どうすべきか相当に思い悩み、半年ほどは考え続けていたでしょうか。

−悩んだ結果、どのような結論を下されましたか?

人生における、猶予期間を設けることを決めました。要するに当時の自分には、デザインを勉強すべきなのかエンジニアリングに専念すべきなのか、あるいは両方やるべきなのかという結論が出せなかったのです。どれだけ悩んでも結論が出せないのは、現時点の自分にはそれを判断できるだけの材料がないということ。十分な知識や経験を得られるまでは、結論を先延ばしにしようと意思決定をしました。

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